三条ところどころ (2004.06.25)
井栗の万葉の藤
 フォトクラブわらじ 春日 芳雄
  四季の移ろいは早いもので、梅、桜、牡丹、藤と花も駈足で去って菖蒲、杜若の緑り滴る中に入梅を迎えようとしている。
 過日田植の終わった井栗の万葉の藤を訪ねて見た。近くにバイパス道路が出来、また遺跡が発掘され、随分環境が変わった。3、4年前は広々とした五月田にこんもり藤の森が有り、水田に赤い鳥居と共に影を映していたが今は見られない。
       妹が家に伊久里の森の藤の花、今来む春も常かくし見む
                                     大原高安真人
 と説明書きが有る。万葉集におさめられている飛鳥から奈良時代の歌とされ、伊久里の森の藤の花を、やがて巡って来る春も、いつもこのようにして眺めていたい。という意味で、昔は周囲百八メートルもあったとか。今は榎の大木に藤の蔓が絡み、全体をおゝい尽くし薄紫色の房が吹き出したように咲いている。三条市指定天然記念物となっているが、万葉集に詠まれた藤は、外に越中であるという説とまた大和であるという説が有るとか。近年藤の木の周辺から土師器や須恵器等が大量に出土し、また藤ノ木遺跡から平安時代の穀倉の遺構や遺物等出土し、保内二ツ山古墳から出土した唐鐘や鉄剣等合せて、何拾代かの藤か知るよしもないが、その生命力と万葉時代と変らぬ藤の香りを漂わせ、古しえの人々の語らいをほうふつさせるような薫風に花房が揺れていた。
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